AI生成イラストの学習に対する権利問題。
著作者に無断で学習させ、モデルを公開するなどの悪質行為が横行していることから、「AI生成学習禁止」と掲げるイラストレーターが数々居ます。しかし、生成AIユーザー視点では「学習は自由」という主張で、双方の思想の違いによる問題が頻発しています。
そんな問題を解決する、AI学習から作品を守る画像生成AIプロテクター「Glaze」というツールが公開されました。今回はそのGlazaの機能や使い方などをくわしく紹介いたします。
AI生成の学習をさせないようにする「Glaze」とは
https://glaze.cs.uchicago.edu//downloads.html
「Glaze」(グレイズ)とは、タイトルの通りAI画像生成の学習データとして使用されることを防ぐためのサービスです。
ブラウザ版・ソフトウェア版の2種類があり、現在無償で利用できます。
Webブラウザ版 ソフトウェア版
シカゴ大学のコンピューターサイエンスの教授と博士課程の学生によって、アーティストが継続的に活動していけるよう開発されたツールです。研究の費用は研究助成金や寄付金から賄われており、現在ユーザーは無償で利用できるようになっています。
「Glaze」がAI学習を防止できる仕組み
そもそも、AIで画像生成を行う際にはノイズが関係しており、Glazeを使用することでさらに特殊なノイズが画像に追加され、これがAI学習を妨害する役割があります。
例えば、絵に全く違う特徴(ピカソの絵等)をノイズ単位で与える事で、機械学習モデルが正確に絵の特徴を認識できないようにする=学習不可能にする効果があります。
このノイズは実際に生成AIの機械学習モデルを元に研究して開発されたツールであり、人間の目では分からない違い(ノイズ)を機械学習モデルに与え、学習させても全く違う結果を出力させるようになっています。
https://glaze.cs.uchicago.edu/jp/what-is-glaze.html
https://glaze.cs.uchicago.edu/jp/what-is-glaze.html
このように、目視ではほとんどわかりませんが、特殊なノイズが追加されています。
これが生成AIの学習時のアルゴリズムに混乱を与え、作品を再現する事を防ぐ効果があります。
「Glaze」の効果について
では、Glazeは実際に効果があるのでしょうか?
実際に効果を検証している方の情報から見ると、以下のような結果となりました。
コピーガードを解除して(または解除されていることを知りつつ)行う複製は、たとえ使用目的が「私的使用」であっても、権利者の経済的損失を多大なものとするおそれがあることから、違法とされています(刑罰はなし)。
文化庁
また、コピーガードの解除ができる装置やプログラムを販売、貸与したり、販売・貸与目的で製造、輸入、所持した者、および客の要請に基づきコピーガードの解除作業を行った事業者は、社会正義に反する行為を行った者として、罰則の適用があります。
ノイズ除去ツールを使っても効果は損なわれない事が報告
このGlazeでノイズを付与した画像からノイズを除去するツールも登場していますが、人間の目で見る上ではノイズが除去できても、完全にノイズを除去できる事は無く、ノイズ除去ツールの公式でも研究結果として「完全には機能するものではない」と発表されています。
その為、十分機能するツールであるという事が証明されています。
絵柄(作風)への学習防止効果の例
https://blog.cara.app/blog/cara-glaze-about
少々分かりづらいですが、左側の「Original」の絵をベースに、同じ絵柄で犬の絵を生成しようとした結果です。
Glazeを使用した絵を学習した物は、元絵と異なる、くっきりとしたラインの異なる絵柄となっています。
「Glaze」の注意点
AI技術は急激なスピードで進歩している為、将来的にはGlazeを適用したイラストのノイズ保護は最新AIのアルゴリズムによって克服されている懸念があると指摘されています。
その為、「法改正などの根本改善までの間、アーティストを保護するツールとして」Glaze公式サイトに記載されています。
Glazeの効果と仕組みのまとめ
このように、作品を保護するためにこのようなノイズツール「Glaze」を使用する事は一定の効果があります。
アーティストはこのようなツールを積極的に使い、悪質なAI学習から作品を守る事が推奨されています。