【解説】ツキノワグマとヒグマは交雑できる?ハイブリッド熊出没の真実

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体の大きな殺人ツキノワグマが現れた事により、ヒグマとの交雑種(ハイブリッド)なのではないか?などと一部噂されておりますが、実際にツキノワグマとヒグマは交配可能なのか、調べてみました。

目次(Tapでジャンプ)

ツキノワグマとヒグマは交雑できる?

ツキノワグマとヒグマの基本情報

ヒグマ(エゾヒグマ)
分類科: クマ科(Ursidae)
属: クマ属(Ursus)
種: ヒグマ(Ursus arctos)
亜種: エゾヒグマ(Ursus arctos yesoensis)
別名北海道ヒグマ
大きさ1.6~1.8 m 、120~250kg(成体)
生息地北海道のみ
ヒグマの基本情報
ツキノワグマ
分類科: クマ科(Ursidae)
属: クマ属(Ursus)
種:ツキノワグマ (U. thibetanus)
別名アジアクロクマ、ヒマラヤグマ
大きさ0.8〜1.5m 、70~130kg(成体)
生息地 本州と四国の33都道府県
ツキノワグマの基本情報

ツキノワグマとヒグマの交雑は、自然ではほとんど不可能

ヒグマとツキノワグマは、同じクマ科に属していますが、異なる種です。
一般的に、異なる種の動物は自然界では交雑することはほとんどありません。(あっても遺伝的に近い近縁種のみ)

また、ツキノワグマとヒグマの間には遺伝的な違いや生息地の違い(北海道と本州・四国の違い)があるため、交雑は非常に難しいとされています。

その為、現状ツキノワグマとヒグマのハイブリッドが存在するというのは有り得ません

あっても、体格の大きなツキノワグマ、もしくは赤褐色の毛色のツキノワグマ(赤褐色の個体も存在する)の存在から、そのように噂されている可能性が高いです。

自然交雑した動物の例:グローラー

グリズリーとホッキョクグマの交雑種。
北極圏で生息域が重なることにより、自然交配が確認されています。
この交雑種は、「グローラー」の他、「ピズリー」とも呼ばれます。これは、グリズリーベア(ハイイログマ)とポーラーベア(ホッキョクグマ)の名前を組み合わせたものです。

自然交雑した動物の例:オナガザル属の種間交雑

異なる種のオナガザル(たとえば、ヒヒとゲラダヒヒ)の間で自然交配が観察されています。

ツキノワグマとヒグマのハイブリッドを人工的に生み出す事は、"理論上"可能

人工的な条件下では、異なる種のクマが交雑することは理論上可能です。

たとえば、動物園や研究施設での交雑実験が行われることがありますが、こうした交雑種(ハイブリッド)は通常、繁殖力が低いか、子孫が生存できないことが多いです。

したがって、ツキノワグマとヒグマが自然環境で交雑することはほとんどないと考えられます。

ヒグマが本州に移り住むことはある?

「でも、ヒグマが本州に移り住んでいたら、ハイブリッドが存在するんじゃないの?」という疑問点が湧き上がってきますが、ヒグマが本州に移り住むというのは、現実的には考えづらいです。

以下に、ヒグマが本州に移り住むことが難しい理由を挙げました。

  • 北海道と本州では気候や生態系が異なる為、寒冷気候に適応したヒグマが生息するには難しい。
  • 北海道より人口密度の高い本州ではクマ被害が甚大化し駆除による絶滅の可能性。
  • ツキノワグマとヒグマでの生存競争が起こり難しい。
  • そもそも種が違うので交雑は難しい。
  • 津軽海峡を泳ぎ切るのは難しい。

このようにさまざまな要因から、本州にヒグマが渡来しツキノワグマと交雑するなどというのは考えづらいです。

津軽海峡を渡ってヒグマが本州に辿り着いたという話はない

本州と北海道の間に位置する津軽海峡は約20km、水深130m前後もあります。
ヒグマは20km程度の海であれば泳ぎ切る事が可能ですが、実際には潮の流れや風の向きにも影響される為、難しいとのことです。1
そして、過去にも津軽海峡縦断したヒグマというのは例に無いようです。

かつて本州にもヒグマは居たが、絶滅

34 万年前~2万年前は、ヒグマは本州に広く分布されていたと確認されていますが、ツキノワグマとの生存競争に敗れたか、環境に適応できなかったか全て絶滅してしまっています。2

また、本州へ渡来し分布していたヒグマも、寒冷期に起こった海面低下を利用し渡来してきたと考えられています2ので、現在では北海道から本州へヒグマが渡来するというのは考えづらいです。

クマ牧場から脱走したクマも捕獲済み

秋田県鹿角市「八幡平クマ牧場」で6頭のヒグマが脱走したという事件が過去にあり(2012年4月20日)4、そのタイミングで繁殖したのではないか?等ともいわれていますが、当日中に全頭捕獲されております5ので、その短期間でツキノワグマと交雑したとは考えづらいです。

ツキノワグマが人を食べるのは何故?

ツキノワグマは通常、ヒグマと違い人を攻撃することは珍しいとされていますが、何故クマ被害が発生してしまうのでしょうか?

理由1:森林破壊による影響で餌を求めて人里に降りてくる

しかし、近年の森林伐採による影響で、自然の食糧(果物、昆虫、小動物など)が減少すると、食糧を求めて人間の住む地域に近づき、人間との接触による防衛反応として攻撃する事があります。
また、ゴミや畑の野菜などの人間の食べ物に慣れる=人間を食べ物と見なしてしまう事による、事故による被害の可能性が考えられます。

理由2:人口減少による、放置森林の増加でクマが増えた

また、反対に人口減少により放置される森林が増えた事によりクマの生息範囲が増え、クマ被害が増えた可能性も考えられます。人間の活動範囲が縮小されることで、クマが人間の気配を感じにくくなり、自然と人間の居住地に近づきやすくなります。

理由3:ドングリの不作

クマは、越冬前に1日中餌を求めて歩き回ります。その際の主食となるのがドングリであり、2023年度はドングリの大凶作によりクマの目撃数が3.5倍にも跳ね上がったと言います。6
ドングリが不作となる原因については、明確は分からないのが現状ですが、農薬や森林破壊、地球温暖化などの人間活動に起因するミツバチの減少が原因の可能性の1つとして挙げられています。7

クマの被害対策はどうすればいい?

クマ対策①ゴミや食糧の正しい管理

ゴミや食べ物の放置は、クマを近づける大きな要因になります。
また、人間の食べ物に慣れてしまうと、「人間=食べ物」と間違った認識を与え、事故につながる可能性があります。
ゴミや食べ物は放置せず、クマが人間の近くに来る誘因を減らしましょう。

クマ対策②農業での対策

農業では、柵や電気柵、騒音装置など、クマを近づけない仕組みを使用する事も対策の一つです。

クマ対策③教育と意識啓発

クマとの遭遇時の適切な行動や対処法を学び、クマに対する誤解や恐怖心を減らし、またそれらの啓発活動を行っていく事が大切です。

クマ対策④生息地保全・ゾーニング管理

森林破壊などを最小限に抑えたり、緩衝地帯を設ける(ゾーニング管理)事で、人間とクマの棲み分けを行い未然に事故を防ぐことが大切です。

クマの生息域の拡大の問題に対応する手法の一つとして、「ゾーニング管理」があります。「ゾーニング管理」とは、奥地の森林などクマの保護を優先する区域と、農地や住宅地周辺など状況によっては捕獲も行うなど人間活動を優先する区域を設定するとともに、これらの間に、銃器や犬を用いた追い払いなどによりクマの出没を抑制する緩衝地帯を設け、それぞれに応じた対策を実施することで、クマと人間のすみ分けを図り、農林業や人への被害を軽減していこうとするものです。

東京都ホームページ

クマ対策⑤クマよけ鈴を使う

クマは本来臆病な性格で、積極的に人を襲うとは考えられていません。
しかし、人間に遭遇すれば縄張りや子グマを守る、防衛反応として攻撃する場合があります。
その為、山に立ち入る際は「クマよけ鈴」使い遭遇しないようにする事が大切です。

ツキノワグマとヒグマは交雑できる?のまとめ

当記事がご参考になりましたら幸いです。

  1. 北海道大学大学院獣医学研究院 野生動物学教室の坪田敏男教授のヒグマに関するインタビュー記事 ↩︎
  2. Ancient DNA reveals multiple origins and migration waves of extinct Japanese brown bear lineages.(古代DNA解析が明らかにした日本列島のヒグマの系統的多起源性と複数回の渡来) ↩︎
  3. Ancient DNA reveals multiple origins and migration waves of extinct Japanese brown bear lineages.(古代DNA解析が明らかにした日本列島のヒグマの系統的多起源性と複数回の渡来) ↩︎
  4.  秋田八幡平クマ牧場における従業員の死亡事故について秋田県 生活衛生課 (PDF) ↩︎
  5. クマ襲撃の2女性死亡 秋田の牧場、雪を踏み台に脱走か ↩︎
  6. ヒグマの目撃 ドングリ不作で去年の3.5倍に 北海道 ↩︎
  7. ドングリが不作の原因は - 森林文化再生 日谷農林管理会 ↩︎
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この記事の著者情報

ぷいのアバター ぷい 編集長

PUIZU編集長のぷいです。猫が大好きです。猫に役立つ、喜ぶグッズの紹介や、私自身の趣味であるイラスト制作やPC・ガジェット、その他豆知識的な役立つ情報の発信を行っていきます。

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